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カミュ戯曲「カリギュラ」レビュー

 小栗旬が秋に「カリギュラ」の舞台を公演するので早速読んでみました。「カリギュラ」は「異邦人」「シーシュポスの神話」と共に、カミュの【不条理三部作】と呼ばれています。

 一読した時は、カイユス・カリギュラなるローマ皇帝傍若無人な振る舞いがあまりにも強烈であっけにとられましたが、もう一度、登場人物の台詞を丁寧に汲みあげながら読んでいくと、一見、狂人にしか思えないカリギュラが、実はある意図を持った上で行動していて面白い!実際にこんな人が周囲にいたら迷惑千万ですが・・・。

 カリギュラは、「人はすべて死ぬ、だから人は幸せではない」という真理に目覚め、「愛だけでは足りない」事に気付き、物事が自分のあるべき姿にない事に絶望・苦しみ、今あるがままの姿の世界に我慢がならず、この世の物ではない何かを求める。。。そして不可能を可能にする事が“自由”であるというカリギュラ。
 彼の慰めとなるのは軽蔑で、神々の愚かしさと憎しみを埋め合わせる為に、神と肩を並べるべく神と同じく残酷になろうとし・・・そうして知ったことは「何一つ長続きはしない」という事と孤独な人間の神のごとき洞察力・・・どこまで行っても求めるものは得られず前に立ちはだかるのは自分自身という事。

 「不可能な事を可能にしたい」という誰もが持ちながらも、現実に折り合いながらなだめていく思いを、カリギュラはこの世で実現しようとしていて、その意志をつらぬき通す姿に惹かれてしまうのかもしれません。カリギュラが何かに委せることが出来れば、事態は違った方向へ行ったのかもしれませんが・・。

 また、カリギュラ(26-29)と彼を取り巻く人達との、それぞれ緊張感のある関係が実に魅惑的で、カリギュラへの反応や末路が異なるのが興味深いです。
 貴族ケレア(30)はカリギュラの行動の意味を見通しており、その事を危惧し、自分達の存在理由を守りたいというある意味健全な人で、カリギュラを倒します。
 従者エリコン(30)はシニカルに物事を捉えていて、情熱を傾けるものがないと言いながら、カリギュラに付き慕い、カリギュラと共に殺されます。
 詩人でカリギュラの友人でもあるシピオン(17)は芸術家肌で若き理想に燃え、父親を殺され憎んでもいるが、カリギュラに自分と似た所を見出し惹かれてもおり、カリギュラから離れて旅に出ます。
 年上の愛人セゾニア(30)はカリギュラを愛で包もうと、残虐な彼に付き従い、カリギュラに殺される。

 「カリギュラ」が書かれたのは1938年で第二次世界大戦前という時代背景も考えると、戦争という不条理の申し子に対する何がしかのメッセージも含まれているのかもしれません。
 それにしても、何故にカリギュラは「月」を欲しがったのか…。「太陽」でも「星」でも良いだろうに、どうして「月」?太陽では暑苦しく、星ではあまりにも彼方すぎるんだろうか?
 あと、カリギュラとがよく出てきて、やたらと鏡を割りたがるので、この場面はどう演出するのか見ものです。
 カリギュラの臣下達への振る舞いは、一見無理難題をふっかけているようで、ある意味筋が通っている部分もあり、その魅力は文章にしずらいので、是非、本を読んでから舞台を観る事をお勧めしたいです。

 余談ですが、この本は絶版になっていたので図書館で借りました。もう少し読みこみたかったので、続けて借りようとしたら次に予約が入っているとのこと。この時期、この本を借りたがるのは、きっと小栗旬ファンだろうと思い、同じ市内にもファンがいるのかと親近感をおぼえていました。(笑)

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